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刑事弁護フォーラム

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刑事手続の流れFOR PUBLIC

大まかな刑事手続の流れを説明します。
事件が発生したあと、すぐに逮捕される場合と捜査がすすんでいくことがあります。

目次

捜査段階

逮捕された場合には典型的には以下のとおりの流れになります。

用語説明その1

逮捕

捜査機関が容疑者の身体を拘束することをいいます。捜査機関が捜査を続け,逮捕状を示されて逮捕される通常逮捕と,逮捕状なしで逮捕される緊急逮捕・現行犯逮捕があります。

検察官

検察庁に所属し,捜査段階では,被疑者を取調べるなどの捜査活動を行います。警察官に対して指示・指揮を行う立場にあり,起訴・不起訴を決める権限を有しています。公判段階では被告人・弁護人とともに当事者となる役割をもつ人です。

勾留

検察官が勾留請求し、裁判所で決定される身体拘束のことをいいます。法律上10日間と定められています。なお、勾留請求が却下される場合もありますが、その後任意捜査され、起訴される場合もあります。

勾留延長

勾留期間は原則10日間ですが,事件が複雑困難などで10日間では起訴・不起訴の決定をするのが困難な場合に勾留を延長することができると定められています。但し,現実的には,否認事件や共犯者がいる事案など多くの事案において勾留延長が認められています。

取調べ

刑事や検察官から事情をきかれることです。逮捕される前の任意での事情聴取は,応じる義務はありません。ですから,警察や検察から出頭を求められても,それを拒否することができますし,出頭した後,いつでも帰ることができます。但し、出頭しなければ逃げるかもしれないとして逮捕されることもありますので慎重に判断しましょう。

他方、ひとたび逮捕勾留されてしまうと,取調べを受ける義務があるとされています。

このように,現在の実務の運用によれば,身体拘束を受けているか否かによって,被疑者に取調べを受ける義務があるか否かが決まるとされています。

接見禁止

弁護人以外の人との手紙や面会が禁止されることをいいます。共犯事件や逮捕された事実を否認している場合に付されることも多いですが、事件と関係のない家族の場合には一部解除されることもありますので、弁護人と相談するのがよいでしょう。

公判段階(起訴された場合)

Q 保釈はどのような場合に認められますか

A 裁判所が判断します。判断するにあたり、事件の重大性や事実を認めているか否か、外に出る必要性がどの程度あるのか、などが参考にされています。

Q どんな証拠が調べられますか

A 検察官が、警察が集めた証拠の中から、起訴状に書かれたことを立証するのに必要な証拠を提出し、裁判ではそれが調べられます。

Q 被告人が外国人の場合、法廷は何語で行われるのですか

A 日本語で行われます。裁判所が法廷通訳を準備して、被告人には裁判内容が理解できるように配慮されています。

Q 証人として呼ばれたらどうすればいいですか。

A 証人して呼ばれたときには,「出頭カード」という書類に住所氏名などの必要事項を書き,宣誓書に名前を書いて印鑑を押すように言われるので,予め印鑑を持っていくとよいでしょう。証言をする場合には,検察官と弁護人や裁判所からそれぞれ質問されますので,記憶のとおりに答えます。また、メモなどを持ち込むことはできません。なお,検察官に呼ばれたから検察官の有利な事実を話さなければならないわけではなく,記憶のとおりに話すことが求められています。

Q 確定したらどうなりますか

A 確定した後,刑務所に行くことになりますが,弁護人であった者でも,依頼者がどの刑務所に行くのか原則知ることは出来ません。刑務所に行った後に,ご自身で,ご家族等にお知らせするようにしてください。

用語説明その2

公判

検察官が起訴した犯罪事実が間違いがないかを審理する手続です。被告人が無実かどうかを決めたり、真実を発見する手続ではありません。検察官が犯罪事実を証明できなければ無罪となります。

保釈

保釈とは,現金を裁判所に預けておくことにより、判決が言い渡されるまでの間,外に出られる制度です。判決が出れば、現金は返ってきますが、逃亡するなどして公判期日に出頭しないと現金は没収されてしまいます。

被告人

起訴されると「被疑者」と呼ばれていた人は「被告人」と呼ばれることになります。「被告人」とは,犯罪を行ったという疑いをかけられて,起訴された人をいいます。

人定質問

裁判のはじめに被告人が、裁判官から,名前,生年月日,職業,住居,本籍について聞かれます。

黙秘権告知

検察官が起訴状を朗読し終えると,裁判官が,被告人に対して,被告人の権利について説明をします。被告人は,答えたくない質問については答えなくてもよい権利をもっています。この権利を黙秘権といいます。そして,その権利を行使したからといって被告人に不利に判断することは許されません。

求刑

裁判のおわりに検察官が「懲役○年に処するのが相当である」などと意見を述べます。あくまで検察官の意見であり,裁判所はそれに拘束されません。

執行猶予

「懲役●年に処す。」といった刑罰が被告人に宣告された後に,「ただし,この刑の言渡しから○年間,刑の執行を猶予する。」と付け加えられることがあります。これが「執行猶予」です。「執行猶予」とは,まさに刑務所に行くことを,しばらくの間猶予するということです。被告人は,有罪として懲役刑を言い渡されても,すぐに刑務所に行く必要はありません。被告人は,刑務所ではなく,社会で更生する機会を与えられ,執行猶予の期間中,犯罪を行わず,何ごともなく過ごすことができれば,期間が経過した後に,刑の言渡しは効力がなくなります。つまり,執行猶予の○年が経過すれば,「懲役●年に処す。」という刑の言渡しはなかったことになるのです。一方,執行猶予の期間に新たな犯罪を行ったときには,場合によっては執行猶予が取り消されることになります。執行猶予が取消されると,被告人は,新たな犯罪の刑罰だけでなく,執行猶予になったはずの前の刑罰も合わせて受けなければなりません。さきほどの例でいうと,被告人が,新たな犯罪で,懲役△年の判決を受けた場合には,●年+△年の期間,刑務所に行かなければなりません。

無罪推定の原則

被疑者・被告人が裁判で有罪と宣告されるまでは,無罪であると推定される権利のことを「無罪推定の原則」と言います。これは裏返せば「疑わしきは罰せず」という考え方になります。刑罰は,被告人の自由あるいは財産,場合によっては生命を奪う手続です。そこで,被疑者・被告人は原則として無罪が推定され,法律に定められた手続によって裁判を受け,実際に犯罪を行ったと証拠によって証明されて初めて有罪とされるのです。

合理的疑いを超えた証明

被疑者・被告人は,無罪の推定を受けています。財産を没収したり,懲役刑に処したり,死刑とすることは,その人に対する重大な人権を剥奪することに他なりません。したがって,万が一にでも間違い(えん罪)があってはなりません。人を不確かなことで処罰してはなりませんから,有罪とするためには,常識に従って判断し,被告人とされた人が犯罪を起したことが間違いないと言えなければなりません。犯罪を起したことに疑いが残る場合には,無罪としなければならないのです。そして,有罪であることは検察官が証明しなければならないとされています。従って,裁判では,検察官の立証によって,被告人が犯罪を起したことが間違いないと証明されたかどうかを判断することになります。被告人が無罪を証明する必要はないのです。

証拠裁判主義

刑事裁判においては,「事実の認定は証拠による」とされています。これは,犯罪が行われたかどうかを被告人の自白だけで決めてはならず,公開の法廷で取り調べられた証拠によって犯罪事実を証明しなければならないことを意味します。マスコミ報道などの法廷以外の事情をもとに判断してはなりません。

公開主義

刑事裁判において,審判を公開の法廷で行う原則をいいます。これは,刑事裁判は被告人にとって重要な手続であり,その公平・公正を保障しなくてはならないため,国民の自由な傍聴を認めた公開の法廷で行われなければならないとされているのです。ですので,裁判は事件関係者であるなしにかかわらず,誰でも傍聴できます。事件に関係しない人たちも傍聴できます。

控訴・上告(控訴・上告した場合)

用語説明その3

控訴

第一審判決に不服がある当事者は,高等裁判所に対し,判決に誤りがあることを主張してこれを正してもらうよう申し立てることができます。控訴審では,第一審と同じやり方で審理を始めからやり直すのではなく,第一審の審理の記録を点検して,その審理のやり方や事実認定,法令解釈に誤りがないか,刑は適当かどうかということを調べることになります。

控訴審においても,国選弁護制度があります。なお,第1審で選任された国選弁護人は,第1審の判決とともに終了し,原則として,別の国選弁護人が選任されます。もちろん,自分で私選弁護人を選任することもできます。

控訴趣意書

第1審判決の誤りを記載しなければなりません。通常は弁護人が作成しますが、自分で作成することもできます。

公判期日

控訴審では第1審のように1から証拠調べを行うわけではありません。ほとんどの事件では第1回で審理をおえるのが通常です。もし公判で証拠を取調べてほしい場合には公判より前に証拠を請求しておかなければなりません。

判決

裁判所は,記録を調査したり,事実の取調べをした結果,第一審の判決に誤りがないことが分かった場合は,「控訴棄却」の判決をします。また,第一審の判決に誤りが発見された場合は,これを取り消すため「原判決破棄」の判決をします。「第1審に差し戻す」場合と「破棄自判」の場合もあります。

上告

上告は,控訴審の判決に不服がある場合に、最高裁判所に不服を申し立てることができます。但し、不服が認められるのは、法律上,控訴審の判決が、憲法の解釈を誤っていたり,最高裁判所の判例に違反している場合などに限定されていますので、非常に狭き門となっています。

上告趣意書

控訴審判決の誤りを記載しなければなりません。通常は弁護人が作成しますが、自分で作成することもできます。

公判審理

上告審では,控訴審と異なり公判期日が開かれることは原則ありません。書面で結果が通知されます。なお,公判期日が開かれるのは,原判決が破棄される場合や死刑事件の場合に限定されています。